用紙の選び方
まずはシール印刷の「土台」となる用紙の種類と選び方をご紹介致します。
シールに使用される用紙には多くの種類がありますが、原料や加工方法の違いにより、それぞれ特徴が異なります。水に濡れても破れない用紙、引っ張っても破れない丈夫な用紙、屋外で使用しても色褪せや黄ばみなどの劣化が起きにくい用紙、耐熱性の高い用紙、光沢があって目立つ用紙など、さまざまな特徴を持つ用紙の中から
・何に使用するシールなのか?
・どんな環境で使用されるのか?
を踏まえて、最適な用紙を選びます。
上質紙
上質紙はパルプを原料とした一般的な用紙で、価格の安さが特長です。
シールやラベルには一般的なコピー用紙と同じ厚みの斤量(*紙の厚みを示す単位)70kg、または少し薄い55kgが多く使用されています。紙なので耐水性はなく、水に濡れる可能性がある場所や屋外での使用には不向きですが、水性ペンによる書き込みやハンコの捺印ができるという利点もあります。
インクを吸い込んでしまうため発色が良いとは言えず、デザイン性の高いシールには不向きです。
おもに業務的な内容表示シールなどに利用されます。
アート紙
アート紙は表面に特殊な塗料を塗って加工した用紙で、表面にほどよいツヤ(半光沢)があります。
印刷した時の発色が良いのでカラー印刷に向いています。
屋内で使用されるシール・ラベルに幅広く利用されています。
ミラーコート紙
ミラーコート紙は表面に特殊な塗料を塗って加工した用紙で、一般的にはキャストコート紙と呼ばれています。
まるでラミネート加工をしたような強い光沢が特徴でインクの発色も非常に良く、目を引くラベルを作成できます。
紙のラベルとしてはとても多く使用されており、デザイン性が高いものから表示ラベルまで、さまざまな用途のシール作成に対応できる用紙です。
ユポ
「ユポ」はユポ・コーポレーションの登録商標名で、一般的には合成紙と呼ばれています。
多層構造になっているので丈夫で、引っ張っても破れにくいという特徴があります。
耐水性に優れており、水で濡れる可能性のある用途に適しています。また、パルプ紙と同様にボールペンなどで文字を記入することもできます。
PETフィルム
PETフィルムの材質はポリエステル(PET)。非常に丈夫で耐水性・耐熱性に優れているほか、屋外での使用でも材質の劣化がしにくいという特徴があります。
用紙の元の色は透明ですが、表面加工によって白、銀、金などの種類もあり、それぞれツヤあり/ツヤなしが選べます。
塩化ビニル
塩化ビニルは通称は塩ビ(PVC)。
素材が柔らかいので、シールの貼り付け面が平らでない場合も貼り付きやすく、よくなじみます。耐熱性はないので火に近い場所で使用されるシールには不向きです。屋外のステッカーによく利用されますが、耐光性能(紫外線に当たっても劣化しにくいこと)は高くないので注意が必要です。
シールの加工方法と選び方
シール印刷では、シールの用途や使用目的に応じた加工を施すことでより効果の高いシールを作成することができます。
ラミネート加工
ラミネート加工は、ポリプロピレン(PP)やポリエステル(PET)などの合成樹脂フィルムをシール表面に貼る加工です。
防水性が良くなるとともに、シールに傷や汚れが付きにくくなります。樹脂の種類によっては紫外線に強いものもあるため、シールの利用環境によってフィルムの種類を選ぶと良いでしょう。ラミネート加工を施したシールには強い光沢がありますが、ツヤなしラミネート加工も可能です。
糊殺し加工
糊殺し加工という加工法があります。「殺す」とは物騒ですが、シールの糊が塗られた面の一部分にニスを塗り、シールの一部のみ粘着力をなくす加工です。
糊を殺す部分の形は自由に設定できるため、商品にちょこんと貼りつけるアテンションシールやPOPシールなどで採用されます。
*1糊ごろし版データ:入稿例
※注意
粘着を殺す部分にニスの塗布をしますので
入稿の版としては下記のようになります。
箔押し加工
箔押し加工は、金や銀などを施して高級感を演出する加工です。インクだけでは表現できない金属質の輝きが特徴です。 加工方法には以下の2種類があります。
・ホットスタンプ:
箔押しのための版を作り、熱と圧力でシール表面に箔を転写する方法です。細かいデザインや文字がつぶれてしまったり、素材と箔との相性でつきが悪かったりする場合があるので注意が必要です。
・コールド箔:
オフセット印刷機を使い、糊で箔をつける方法です。圧力をかける必要がないので細かいデザインや文字でもつぶれる心配がなく、箔の上からも印刷ができるなど、デザインの幅が広がる箔押し方法です。
ご注文時には、弊社で最適な手法を選択し印刷いたします。
エンボス加工
エンボス加工は、文字や柄に合わせシール表面に凸凹をつけることで陰影と手触りを生み出します。 金や銀などのフォイル紙にエンボス加工を施すと、まるで金属メダルのような高級感が生まれます。
裏スリット加工
裏スリット加工は、シールやラベルの台紙だけに切れ込みを入れる加工で、台紙を一部分だけ剥がしながら貼りつけることができます。シールを台紙から全部剥がすよりもシール貼りの失敗が少なくなるだけでなく、台紙から剥がしやすくなる効果もあり、シール貼りの作業効率が上がります。特に、横長のシールやラベルをボトルなど平面ではない形状のものに貼りつける場合に採用される加工方法です。
糊の選び方
シール印刷では、接着面に使われている糊が非常に重要な役割を果たします。
「使っているうちにシールが剥がれてきてしまった・・・」
「このシール、剥がせたら便利なのに・・・」
そんな風に思ったことはありませんか?
用途や使用環境に応じて最適な糊を選ぶことで、より使いやすく、作業効率の高いシールを作成することができます。
一般強粘着
一般強粘着は、その名の通り、一般的な粘着力の糊 で、日常生活での使用を想定した粘着力です。特殊なものへの貼り付けは行わない、高温・低温の環境下で使用しない前提なら、一般強粘着の糊でシールを作成します。
強粘着
強粘着は、一般強粘着よりさらに粘着力の強い糊です。剥がれてはいけない用途でシールを作成する場合や、特殊な形状・素材に貼る場合、シールを貼った後に冷凍庫に入れる…など一般強粘着では不安がある場合に選ばれる糊です。
【こんな場合におすすめ】
・冷蔵・冷凍食品のラベル
・危険物などシールの表示内容が剥がれてはいけないもの
・屋外で長期間使用するステッカーやシール
弱粘着(再剥離)
弱粘着は、一般強粘着よりも粘着力を弱めた糊で、再剥離とも呼ばれています。
シールを貼りつけて使用した後シールを改めて剥がす必要がある場合に選ばれます。
・剥がしたシールは捨てるのか/また使用するのか
・何に貼りつけるのか
など、粘着力をどの程度弱めるかはシールの用途によって充分に検討する必要があります。
【こんな場合におすすめ】
・個人情報保護用シール
・商品から剥がして台紙に貼り直すポイントシール
・食器に貼りつける商品名ラベル
仕上げ方法の選び方
シールの仕上げ方(納品形態)は、シールを貼りつける方法によって変わります。
特に自動貼付機を用いる場合、指定寸法に誤りがあればそのシールは使うことができなくなるので注意が必要です。
弊社では納品形態についても指定ができます。
ロール仕上げ
ロール仕上げは、完成したラベルをロール状に巻いて仕上げる形態で、主に自動貼付機を用いてシールを貼る場合に採用される仕上げ方法です。 使用する自動貼付機によってシールの仕様を細かく確認する必要があります。
【ロール仕上げで確認するポイント】
・シールを表面にして巻くか、裏面にして巻くか
・シールをどの向きで印刷するか
・シールとシールの間隔(ギャップ)を何ミリ取るか
シート仕上げ
シート仕上げは、人の手でシールを貼りつける前提で採用される仕上げ方法です。
シールの枚数を数えやすいので管理がしやすく、「今何枚貼ったか」「あとどれくらい残っているか」などがすぐに分かります。 シール台紙の大きさや割り付け枚数を変えることで作業効率が上がる場合もあります。
ハーフカット仕上げ
ハーフカット仕上げは、シールは型に合わせてカットし、台紙はカットせずにそのまま残す加工で、このハーフカット仕上げがほとんどのシールで採用ています。シールとして使用しない部分(カス)は、そのまま残すことも剥がして納品することもできます。
シールの印刷方法
シール印刷では、印刷するデザインや印刷枚数によって印刷方法が変わります。
印刷方法それぞれに向き・不向きがあり、同じデザインのシールでも印刷方法の選び方次第で印象ががらりと変わる場合もあります。 弊社では以下の印刷方式のいずれかにてシールを制作いたします。
(印刷方式は弊社スタッフが内容をお伺いして決定いたします)
凸版輪転印刷
凸版輪転印刷は、印刷する部分が凸になっている樹脂製の版(凸版)を円筒状のシリンダーに貼りつけ、回転させながら印刷する方法です。大量にシールを制作する場合はオフセット印刷よりも費用が安くなり、大ロットのシール印刷では一般的な印刷方法です。以前は細かいデザイン描写には不向きな傾向がありましたが、製版技術の向上により対応できるデザインの幅は広くなっています。
凸版平圧印刷
凸版平圧印刷は、凸版に上から圧をかけて印刷する方法で、ハンコを押すのと同じ仕組みで印刷します。複数のインクを使うデザインや細かい模様のデザイン、大量ロット制作のシールには不向きですが、1色使いのシールでは比較的リーズナブルに制作できる印刷方法です。
オフセット印刷
オフセット印刷は、版についたインキを、ブランケットと呼ばれる樹脂やゴム製の転写ローラーにいったん移し、そのブランケットを介して印刷用紙に転写される方法です。オフセット印刷に使用する版は凸凹がなく平らです。版に乗ったインクは直接印刷用紙に触れず、いったんブランケットと呼ばれる円筒状のゴムに転写され、ブランケットから印刷面に印刷されます。細かい点(アミ点)の描写でデザインを再現するので、複雑なデザインや微妙な色出しにも対応できる印刷方法です。
オンデマンド印刷
オンデマンド印刷、デジタル印刷は、版を作成せず、デザインデータを高性能なレーザープリンターで直接印刷する方法です。印刷スピード自体はそれほど速くありませんが、版下を作成する必要がないので低コストで小ロットのシール制作が可能です。
数十枚から数百枚程度のシールなど、少量のシールを必要なだけ欲しい場合に用います。
【よくある質問はこちら】
シルク印刷
シルク印刷は、スクリーン印刷とも呼ばれ、細かな穴を開けた版の上にインクを流し、穴からしみ出すインクで印刷する方法です。
かつては版にシルク(絹)が使用されていたためにこの名前がつけられました。細かなデザインや多色使いのデザインには不向きですが、インクが厚く盛り上がるので立体感があり独特の見た目と触感になります。お酒やお菓子などの商品ラベルに採用すると効果的です。
入稿する際の注意点
印刷に使用するデータを印刷会社に渡すことを入稿といいます。
入稿したデータに不備があると、データが差し戻されて納期が遅れるだけでなく、最悪の場合には間違った内容のシールが完成してしまうことになります。シール印刷に使用するデータの作成についての注意点を簡単にまとめました。
フォントのアウトライン化
原稿中のフォントをパスに変える処理をアウトライン化と呼びます。
アウトライン化していない場合、原稿を制作したソフトの種類やフォントによっては、文字化け(判読できない文字や記号に置き換えられてしまうこと)やズレが発生する可能性があります。フォントをパスに変換していない場合、著しくイメージと異なる印刷結果となりかねません。
フォントはすべてアウトライン化したうえでご入稿ください。
※アウトライン化すると原稿の文字部分は修正ができなくなるため、アウトライン化する前の原稿は必ず保存しておきましょう。
解像度について
パソコンのモニタではくっきり鮮明に映っている画像やイラストを紙の印刷に使用すると粗い印刷になることがあります。画像は細かな点(ドット)の集合で表現されますが、1インチあたりにいくつドットがあるか(dot per inch=dpi)によって画像の精度は変わります。印刷に使用する画像は350dpi以上を推奨しておりますので、350dpiを下回る画像を使うと粗い印象になってしまいます。
カットパスについて
シールやラベルは、画像やイラストの周りに少し余白を残して型抜きする場合があります。
このシールやラベルを裁断するラインをカットパスと呼びシールの形を決めるラインになります。カットパスが正確に作成されていない場合、デザインの一部が切れる、シールの一部がカットされておらず台紙から剥がせない、といった不具合が生じます。
カットパスについては
・カットパスは画像やイラストから2ミリ以上離して作成する
(カットする際に1ミリ程度の誤差が生じる場合があります)
・カットパスは曲線で作成する
(直線のみのカットパスだとシールを剥がす際に破れやすくなります)
に注意して作成しましょう。
弊社への入稿データについて
弊社ではIllustratorのAI形式もしくはPDF形式での入稿を推奨しております。
*Illustrator CS5と互換性を持たせての入稿をお願いしています。
その他にもOfficeの各形式、PhotoshopのPSD形式、画像(JPEG/PNG/TIFF等)での入稿も可能ですが、データ変換料がかかります。
(データ変換料は内容によって変動します。金額は別途お問い合わせくださいませ)
【よくある質問はこちら】
>WordやExcel、Powerpointのデータでも印刷できますか?
まとめ
いかがでしたでしょうか。シール印刷では用紙、加工方法、糊、印刷方法などの要素を用途に応じて検討する必要があること、入稿の際には印刷トラブルを避けるためのいくつかの注意点があることがお分かりいただけたことと思います。
シールやラベルは、商品の「顔」となって売り場で商品をひときわ輝かせたり、消費者に必要な情報を間違いなく届けたりする役割を担っています。ご用途に応じて最高のシール・ラベルを作成するために、私たちのアイディアやノウハウをご活用いただきたいと思います。
オリジナルシールの作成ならお気軽にご相談下さい。